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『オンネリとアンネリのおうち』:幸福のために必要なもの、それは。

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フィンランド映画『オンネリとアンネリのおうち』の試写会に行ってきました!マリヤッタ・クレンニエミによる児童文学が原作の本作は、主人公の2人の女の子がひょんなことからとてもかわいいお家を買って(!)、親切なおまわりさんや、気難しそうなお隣さん、魔法が使える陽気なおばさん姉妹、ちょっぴり変わったご近所さんと交流しながら暮らす日々を描いています。

オンネリとアンネリが手に入れた家がとにかくキュートでカラフルで、そこで彼女たちがそれはそれは楽しそうに暮らしている様子にジーンと来てしまうのと同時に、「私もこんな風に暮らしたいな~!」というわくわくする気持ちも湧いてきて、もうとにかく元気になりました。

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家は本作では重要なファクターのひとつになっています。彼女たちが暮らすのは、「2人の少女のための家」。スケール感が私たちがふだん暮らす家とずいぶん違って、かなりコンパクト。階段の蹴上もたぶん通常より低い16cmくらいなんじゃないかなと思います。ドアもおそらく170cmくらい?ノッポなお隣さんが訪ねてきたシーンでそれがとても際立っていました。

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ペンダントランプの高さ関係も、子供たちにとっては頭上から照らしてくれますが、大人はむしろランプシェードの上から見下ろす形になって、ちっとも明るく見えません。そう、大人には全体的にちょっと小さいんです。子供の身体スケールにジャスティファイされた家なんですね。

 

そこでふっと思い出したのが、私が子供の頃に近所の女の子たちと一緒につくった「秘密基地」。家からありったけの傘を持ってきて、開いた状態で上手に重ねて、ドームみたいに組み上げました。内部は傘の柄があるからとても入り組んでいるし狭いんですが、私たち子供は十分にくつろいだり動き回ったりできました。一方で、大人たちは足を入れることくらいしかできませんでした。その「私たち子供しか入れない」という特別感がとても楽しかった。もう25年くらい前のことで、すっかり忘れていましたが、オンネリとアンネリが思い出させてくれました。こんなふうにふわっと昔の記憶が蘇ることが、このあとも何回もあって、その度に懐かしさで心が温かくなりました。

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オンネリとアンネリのおうちは、ばらの木夫人から譲り受けたものです。きっとばらの木夫人の作る家は、ふつうの家と違って、住人たちの心を実体化させるものなのでしょう。住人たちが心に秘めている願望、憧れ、好きなもの。住人たちが幸せに暮らせるように優しく包み込むもの。オンネリとアンネリが成長して、身も心も大人になったらこの家はどうなるんでしょう?彼女たちが飼う2羽の鳥たちはそれを暗示するものなのでしょうかね。

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試写会場から本屋さんに直行して、原作本を買ってすぐ読みました。大きな違いとして気になったのが、家族という存在です。オンネリとアンネリは、それぞれ家族との没交渉で孤独を感じています。映画では原作に加えてもう一人、家族との関係に悩む人物が登場します。アイスクリーム屋さん、そう、独立して働く大人です。家族の悩みに大人も子供も関係ないんです。みんなそれぞれの事情を抱えて悩んでいる。それを良い方向へと促す可能性として、家族以外の身近な人々の存在が明るく温かく描かれていました。子供も大人も平等に対等に交流する姿は、とてもフィンランドらしいなと思います。まったく同じようには難しいけれど、良いところは学んでいかねば。

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あともうひとつ気になったのは、お金です。原作でも映画でもかなり重要な役割を持っています。なにしろこのおかげでひと騒動起きましたから。しかし原作と映画で違う点がここにもあります。オンネリとアンネリが家を手に入れるためには対価としてお金が必要でした。(まあ、このお金はきっとばらの木夫人自らがあらかじめ用意したものなのですが)しかし、物語の最後でもう一軒、ばらの木夫人からとある家族へ譲られた家は、映画では金銭の授受がありませんでした。大人と大人の譲渡なので、原作のように、ふつうならあってしかるべきです。ここまで、物語の中では物の購入や貯蓄などに触れ、きちんと金銭について描かれていました。なので、ここでばらの木夫人がお金を要求しなかったことは理由があるはずです。

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泥棒してまでお金を得ようとした人物との対比。そして、物語冒頭で大金を拾った時のオンネリとアンネリの「お金だけ?」「お金なんかよりシールがよかった」「お金を束ねているリボンだけもらおう」という絶対的な自分の価値観を尊重する純真さとの類似。それらによって、ばらの木夫人の神秘性がグッと深まりました。そうして彼女はファンタジックな存在として描かれていますが、でも大丈夫。私たちも、魔法の力はないけれど、彼女のようになることができます。大人として成熟しながらも、子供のような純真さを兼ね備え、人の幸福のためにそっと力を貸して、優しく見守ってくれる人。こんな素敵な人に私もなりたい。この映画は、温かさとともに、素敵な指針を与えてくれました。

店長カトー/ Mayuko Kato

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こちら予告編です↓ソーキュート!

『オンネリとアンネリのおうち』
6月9日より、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー!
配給:アット エンタテインメント
© Zodiak Finland Oy 2014. All rights reserved.

原作「オンネリとアンネリのおうち」著者:マリヤッタ・クレンニエミ/訳者:渡部翠/出版社:福音館書店
監督・脚本:サーラ・カンテル「星の見える家で」/脚本:サミ・ケスキ=ヴァハラ「旅人は夢を奏でる」/製作:テーア・フーテア、サリ・レンピアイネン/撮影:マリタ・ヘルフォルス「星の見える家で」/衣装:アウリ・トゥルティアイネン/音楽:アンナ・マリ・カハラ/編集:アンネ・ラカネン

出演:(オンネリ/黒 髪の女の子)アーヴァ・メリカント、(アンネリ/金髪の女の子)リリャ・レフト、(バラの木夫人)エイヤ・アフヴォ、(リキネン)ヤッコ・サアリルアマ、(ウメ・ボーシュ)ヨハンナ・アフ・シュルテン、(ノッポティーナ)エリナ・クニヒティラ、(プクティーナ)キティ・コッコネン

2014 年/フィンランド/フィンランド語/80 分/原題:Onneli ja Anneli /英題:Jill and Joy/© Zodiak Finland Oy 2014. All rights reserved. 配給:アット エンタテインメント 公式 HP www.onnelianneli.com