作成者別アーカイブ: hokuouzakka

映画『サーミの血』自分の人生を自由に生き抜くための闘いの物語。

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映画『サーミの血』主人公エレ・マリャ

2016年東京国際映画祭で審査委員特別賞と最優秀女優賞をダブル受賞し、世界の映画祭でも絶賛の声が相次ぐ『サーミの血』が、いよいよ9月16日(土)より日本で劇場公開されます。

物語の舞台となるスウェーデンの自然や、サーミ人の歌「ヨイク」の美しさとともに、一人のサーミ人の少女が差別に抗い生き抜く姿が、時に生々しく力強く描かれている本作を観たあとには、きっと「北欧についてもっと知りたい」という気持ちと、「自由に生きるということとは?」という自分への問いが湧き出てくるのではないかと思います。

「自分の過去を捨てたサーミ人は、本当の人生を送ることができたのだろうか?」

監督は、スウェーデン人の母親とサーミ人の父親の元にスウェーデンで生まれ、デンマーク国立映画学校で学んだアマンダ・シェーネル。また、出演者もノルウェー人とスウェーデン人によって構成され、特にサーミ人の役柄は実際のサーミ人俳優が演じています。過去の民俗学的調査や人種調査の為の撮影に懐疑的だった彼らの出演を実現させたのは、監督自身の生い立ちと、長年ずっと考えていた「過去を捨てたサーミ人」の人生についての疑問を含めた、丁寧な説明だったといいます。

 

監督の探し求めていた、南部サーミ人の姉妹との奇跡の出会い

主人公のサーミ人姉妹エレ・マリャとニェンナのを演じたのは、南部サーミ人でトナカイの遊牧をして暮らすレーネ=セシリア・スパルロクとミーア=エリーカ・スパルロク。彼女たちは実の姉妹です。監督は「これだけの条件を揃えた役者を見つけるのは絶対ムリだろうな」と思っていたそうで、彼女たちとの出会いはまさに奇跡のような素晴らしい幸運でした。

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「自分の将来も考えられない、あんたはバカなラップ人よ」少女エレ・マリャのルーツからの決別

本作は、主人公のサーミ人の少女エレ・マリャが、自身のルーツから断絶してでも自分の真の居場所を探す、闘いの物語です。何もかもから離れ去るという過酷で困難な道を進むことは、強い意志なくしては果たせません。彼女が内に抱える羞恥心や誇りや賢さを、私たちは固く拳を握り息を詰めて見つめます。世代が下がるにつれてサーミ人への意識がグラデーショナルに変化していくのは、かすかとはいえ確かに希望を感じました。

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私たちは普段、ラップランドやサーミと聞くと、雄大な自然やトナカイの遊牧、角・木工芸品などを漠然とした憧れのような気持ちを伴って思い浮かべます。しかしこの作品は、そんなイメージとは真逆の事柄、すなわちサーミ人の受けてきた迫害や彼らを取り巻く人々や社会の状況を、一人の少女を通してずっしりと教えてくれます。

 

この作品を観る前後で、きっと北欧に対する感じ方は変わるでしょう。そしてきっと、「もっと北欧について知りたい」という気持ちがじわじわと湧いてくるのではないかと思います。私も改めて歴史の勉強をしています。今までと異なる視座から見る歴史は、全く違った様相を見せてくれます。この作品を観るのは確かにつらい現実を知ることにはなりますが、それでも私は、『サーミの血』を観ることができて良かったと心から思います。

サーミの血_flyer

映画『サーミの血』
2017年9月16日(土)より、新宿武蔵野館、アップリンク渋谷ほか全国順次公開http://www.uplink.co.jp/sami/

(2016年/スウェーデン、ノルウェー、デンマーク/108分/南サーミ語、スウェーデン語/原題:Sameblod/DCP/シネマスコ―プ)
監督・脚本:アマンダ・シェーネル
音楽:クリスチャン・エイドネス・アナスン
出演:レーネ=セシリア・スパルロク、ミーア=エリーカ・スパルロク、マイ=ドリス・リンピ、ユリウス・フレイシャンデル、オッレ・サッリ、ハンナ・アルストロム
後援:スウェーデン大使館、ノルウェー王国大使館
配給・宣伝:アップリンク

(c) 2016 NORDISK FILM PRODUCTION

店長カトー/ Mayuko Kato