Björkは押し広げる、可能性も空間も。

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白鳥のドレスでアカデミー賞のレッドカーペットを歩く姿が今でも脳裡に焼き付いています。あれはとってもファニーでチャーミングで、そしてシニカルだった。アイスランドのアーティスト、Björk(ビョーク)。彼女はいつでも時代の最先端の技術を呑み込んで、自らの中で消化を試みて、歌とともに排出します。近年、彼女はVR(=Virtual Reality)に喰らいついています。そのうち3つの作品が体験できるということで、日本科学未来館に行ってきました。展示名は「Björk Digital ―音楽のVR・18日間の実験」。振り返るに、「確かにこれは実験であった」としみじみ思います。

仮想の空間をあたかも本物であるかのように認知させる技術、VR。空間に並々ならぬ興味を持っている私も、とても気になって注視している分野で、いろんな体験会に行っています。その中でも、あのビョークがVRに挑んでいるとあればたまりません。エンターテイメント性云々はともかく、その試みは絶対におもしろいに決まっています。(アイスランドは「北欧」か?、と言われると微妙なのですが、北ヨーロッパであることは確かなので、どうぞお見逃しを。)

 

©Santiago Felipe

©Santiago Felipe

会場に入ると、回転式(ナイス!)の丸椅子が並べられ、ヘッドフォンとVRゴーグルの装着を促されます。ゴーグルの中にはスマートフォンが仕込まれていてちょっと重め。開始すると、アイスランドの海辺の風景が360度に広がります。ビョークはこの土地で生まれ育ったんだな、とアイスランドの風景を吟味していると、その荒涼とした海辺で、ビョークが自分のまわりをゆったりぐるりと歩き回り、時に分身しながら歌います。「近い!」とか「!囲まれた!」と反射的に思う度に愉快な気持ちになって笑ってしまう。私のために一対一で歌ってくれているんだな、という気持ちになるほどのダイブ感を味わうには、正直画面の歪みが邪魔をするのですが、それを差し引いても、今までにない音楽体験です。

©Andrew Thomas Huang

©Andrew Thomas Huang

 

次の部屋へ移動して、同様に装着。あらかじめスタッフの方から「赤色が続きますので、気分が悪くなったらお知らせください」と注意が入りました。始まってみて、なるほど、これは気持ちが悪い。歌うビョークの口の中の360度映像です。歯や舌が動きまわり、しかも視界がずっと揺れているので、平衡感覚が大いに乱され、酔います。悪夢っぽい。「そうだ、この人は、歌手というかむしろ、アーティストなんだった」と思い知りました。そうだった、これがビョークだ。しかしよく口の中なんか撮らせたよなあ、と正直な感想が漏れました。

 Mouth Mantra VR ©Jesse Kanda

©Jesse Kanda

 

最後の部屋は、椅子ではなく、上からコードに繋がれたゴーグルがぶら下がっていました。小部屋の中を(コードが届く範囲で)自由に歩き回っていいタイプの体験。この飾りっ気のなさ、実験感あっていい感じです。

©Santiago Felipe

©Santiago Felipe

これが一番良い体験でした。最初は自分と同じくらいの背丈の、スパークする人型が、その場で足踏みをしながら歌うのですが、この人型が少しずつ体が大きくなっていくんです。単純に、怖い。大きなものに対する恐怖感がじわじわと湧いてきます。しかも相手は火花を散らし、体はもぬけの空で、実体がない、得体のしれない「何か」。回りを見渡しても宇宙空間のようで、この世界には自分とこの「何か」しかいないということに絶望感を味わう。かなりこの仮想現実に没入(ダイブ)しました。

©REWIND VR

©REWIND VR

 

観終えてからしばらく、現実の世界に戻ってくるために少し休憩が必要でした。「空間を新しく作ってしまうってどういうことだ…」とその可能性の広がりに頭がくらくらします。しかし凄い情報量でした。歌がスタンドプレイしておらず、空間/環境の一要素となっていました。新しい技術に対して、自分の中に取り込み確実に咀嚼をする、文字通り体を張るビョークに敬意を表します。

次回北欧に行く際には、フェロー諸島からちょっとがんばって足を伸ばして、アイスランドへ行ってみようと思います。ビョークを産んだ土地に立って、何を見て育ったのか見てみたい。

会場で体験できる3作品のうちのひとつが、Youtubeで公開されています。360度映像なので、PCで観る場合はポインタをドラッグ、スマートフォンで観る場合は機体を傾けることでぐるぐると視界をめぐらせることができます。断然スマートフォンでの鑑賞が断然おすすめです。Youtubeアプリでどうぞ。

 

アイスランドのアイテムはお取り扱いがないのですが、ビョークの名前にちなんで、白樺のアイテムをご紹介しますね。

白樺アイテムいちらん
http://www.hokuouzakka.com/products/list.php?name=bjork160722

日本科学未来館「Björk Digital ―音楽のVR・18日間の実験」
http://www.miraikan.jst.go.jp/exhibition/bjorkdigital.html

※本ページの画像は、日本科学未来館より許可を得て掲載しております。

今回の記事の写真は、すべて日本科学未来館よりご提供頂きました。会場は撮影OKでしたが、いかんせん全体が暗く、さらにゴーグルの中の空間はその外からは一切見えませんので(なんたってここがVRの醍醐味ですね)、自前の写真が用意できず。